五行説③木の性
洪範五行伝に曰く、木に曲直と曰うは東方。
周易に云う、地上の木を観となすと。
言うこころは、春の季節に地上に出てくる木は曲ったり真直ぐにならないものは無い。
花や葉を見ることができる。
人の威儀や容貌の様である。
許慎云う、地上の観るべきものは、木にまさるものはない。
故に相の字は目が木を傍(かたわ)らにしている。
古(いにしえ)の王者は、輿に乗る鸞和(らんか・天子の馬車に付ける黄金製の鈴)の節あり、
車を降りるに佩玉(はいぎょく・礼服を着た時に付ける玉)の度あり、
田狩(でんしゅ・狩り)に三駆(さんく・先王田猟の制度で三方は囲むが、
一方は開けて完全には包囲しないこと)の制あり、
飲餞(いんせん・古に遠方に行く時、道祖神を祭ってその安全を祈り、
その後その側で酒盛りをすること)に献酢(けんさく・杯のやりとり。
始め主人が賓客の為に酌むのを献、次に賓客が主人に酌むのを酢という)の礼あり、
事なきときは巡幸(天子が地方を巡行すること)せずば、民の時(農民の繫忙期)を奪うは無し。
春は農事の始まりだからである。
貪欲(どんよく)姦謀(かんぼう)が無いのは、木の氣に順ずる所以である。
則ちその性の如く、盛んに茂って敷実(ふじつ・あまねく実る)し、以て民の用をなす。
真っ直ぐな者は縄(じょう・大工さんが木に真っ直ぐな線を描くのに使うすみなわ)に
中(あた)り、曲なる者は鈎(こう・ぶんまわし・コンパス)に中る。
若し人君、威厳を失い、酒に酖(ふけ)りて淫縦(いんしょう・はなはだほしいままのこと)し、
徭(よう・夫役(ぶやく)。公共の土木工事などをに役うこと)を重くし税を厚くし、
田猟度なければ、則ち木は、その性を失い、春草木は成長せず、民の民の用をなさず。
橋梁(きょうりょう・橋)はその縄墨に従わず。
故に曲直せずという。
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