五行説④火の性
火に炎上と曰う。
炎上とは、南方、光輝(ひかり)を揚げ、盛夏に在り、氣は極まり上る。
故に炎上と曰う。
王者、明に向かいて治まる(王様が正しい政治をすると善く治まる)。
蓋(けだ)しその象を取る(まさしくその様になる)。
古(いにしえ)は、明王南面(天子の座は南を向いていたことから天子になること)して政を聴き(政治を行うこと)、海内(天・地・水・陽の四海。天下のこと)の雄俊(優れた才智を持っている人)を攬(と)り(集める)、これを朝(天子が政治を執る所。朝廷)に積み(配置すること)、以て明(良い政治)を助をくるなり。
邪佞(よこしまでへつらうこと)の人臣を退け、これを野(や)に投じ、
以て壅塞(ようそく・ふさがること)を通ず。
その人を任得(任命すること)すれば、則ち天下大いに治まる治まること、
垂供(すいきょう・何もしないで腕組みをしていること)してなすなし。
易は離(り易の卦で物は火、方位は南)を以て火となし、明となす。
離を重んじ明(あきらかなこと)を重んずれば、則ち君臣倶に明らかなり。
明らかなれば、則ち火の氣に順(したが)う。
火の氣順なれば、則ち能く成熟し、人士(じんし。人々のこと)の用に順う。
これを用うれば則ち起り、これを捨つれば則ち止む。
若し人君明らかならずして、賢良を遠ざけ讒佞(ざんねい・心がよこしまで口がうまいこと)を進め、法律を棄て(すて・放り出すこと)骨肉(こつにく・肉親のこと)を疎んじ、忠諌(ちゅうかん・忠義の臣の心からする諫め)を殺し罪人を赦し、嫡(ちゃく・本妻の子。あとつぎ)を廢(はい)して庶(しょ・妾の産んだ子)を立て、妾(しょう)を以て妻となせば、則ち火は、その性を失い、用いざるに起こり、風に随(したが)いて斜(なな)めに行き、宗廟(そうびょう・祖先を祀る御霊屋)・宮室を焚(や)き、民居を燎(や)く。
故に火に炎上せずと曰う。
0コメント