五行説⑥金の性
金に従革(思うままに形を変えること)と曰う。
従革とは、革は更(改(あらた)まること)なり。範(一定の基準)に従いて更(あらた)まる。
形革(あらた)まりて器を成すなり。西方の物、既に成りて、殺気の盛んなるなり。
故に秋氣起こりて鷹隼(ようじゅん・たかとはやぶさのこと。漢書五行志による)
撃(はばた)き、春氣動きて、鷹隼化(変化する)す。
これ殺生の二端(にたん・二つの始まり)なり。
是(ここ)を以て白露(しらつゆ)霜(しも)となる。霜は殺伐の表(ひょう・あらわれ)。
王は兵を教え、戎事(じゅうじ・戦争のこと)を集め、以て不義を誅(ちゅう・罪人を殺すこと)し、棒乱を禁じ、以て百姓(一般市民のこと)を安ずる。
古の人君は安(安らかな状態のこと)けれども危(あやう・危険なこと)きを忘れず、
以て不虞(ふぐ・思いがけない禍(わざわい))を戒(いまし・注意を払うこと)む。
故に曰く、天下安きと雖(いえど)も、戦いをわするる者は危うく、
国邑(国都、漢代の諸侯の封地)強きと雖も、戦を好めば必ず亡(ほろ)ぶ。
殺伐(戦さ・討伐)は必ず義(正しい道理)に応ず。
義に応ずれば、則ち金氣順(したが)い、金氣順えば、則ちその性のごとし。
その性の如き者は、工冶(こうや・鍛冶屋、鋳物師)鋳作(ちゅうさく・金属を鋳て器を作ること)し、形革(あらた)まりて器を成す。
もし人君、浸凌(しんりょう・犯して辱める)を楽しみ、攻戦を好み、色賂(しきろ・男女の情欲や贈物)を貪(むさぼ)り、百姓(一般市民のこと)の命を軽んじ、人民騒動すれば、則ち金その性を失い、冶鋳化せず、凝滞(ぎょうたい・とどまりとどこおること)渠堅(きょけん・大きくてかたいこと)にして、成らざる者衆(おお)し。
秋時は、万物みな熟し、百穀已(すで)に熟す。
若し金氣に逆らえば、則ち万物成らず。
故に金に従革せずと曰う。
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