五行説⑦水の性
水に潤下と曰う。
潤下とは、水の湿(うるえる)に流れ、汙(くぼめる)に就(つ)きて下れるなり(水は水は湿った方に流れ、くぼんだ方に下る)。
北方は至陰、宗廟・祭祀の象なり。冬は陽の始まるところ、陰の終わるところ。
終始は、綱紀(こうき・大綱(おおづな)と小綱(とこづな)。掟(おきて)のこと)の時なり。
死する者の魂氣(こんき)は、天に上(のぼ)りて神となり、魄氣(はくき)は、
下降して鬼(き)となる。精氣を散じ、外に在りて反(かえ)らず。
故にこれが宗廟を為(つく)り、以て散ずるを収(おさ)むるなり。
易に曰く、渙(かん・氷が解け割れる意味。散る。(大川を渉るに利あり。
貞(ただ)しきに利あり。))は亨(とお・良い卦である。)る。王有廟に仮(いた)る。
これこれの謂(い)なり。それ聖人の徳は、また何を以て孝に加(くわ)うるか。
故に天子親(みずか)ら耕し、以て粢盛(しせい・黍を神に供えるために器に盛ったもの)を供し、王后親(みずか)ら蚕し、以て祭服供す。敬の至なり。
敬の至れば、則ち鬼神これに報(むく)ゆるに、介福(かいふく・大いなる幸福)を以てす。
これ水氣に順(したが)うなり。水氣順(じゅん)なれば、則ちその性の如し。
その性の如くなれば、則ち源泉通流し、以て民の用に利す。
若し人君、祭祀を廃(す)て、鬼神を漫(あなど)り、天地に逆らえば、則ち水その性を失い、
水暴(にわか)に出(いで)て、漂溢没溺(ひょういつぼつでき・ただよいあふれおぼれしずむ)し、城邑を壊し、人の害をなす。
故に水に潤下せずと曰う。
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